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2008年2月28日 (木)

使命感、実現欲、名誉心、そして金銭欲

NNAというビジネス冊子でのコラムを書くことが決まった。この冊子、日本をはじめ、中国圏、アセアン、欧州の企業約6000社を対象に発行されているもの。コラム内容は企業CSRについて。ボランティアと捉えがちのCSRだが、最近は、日本でも経営戦略に不可欠のもの、との認識が徐々に浸透しているようだ。本屋でも、ビジネス入門書の一つとして、CSRが単独テーマとして扱われている場面を見かけることが多くなった。長期戦略に沿って、確実に市場を抑え、利益を生み出すツールとして扱われているCSRの概論や事例を、大いに紹介していくつもりである。

NNAのコラムでは、事例を書くことが多くなるはずなので、あまり概論には触れることはないだろう。しかし、ここでは、敢えてちょこっとだが、概論に触れてみたい。最近一番気になっていること、非営利を目的とした事業で、如何に自立のための営利を構築させるか、という事柄に関して。社会起業家にとっての命題とも言えることについて。

マイケルポーターが戦略CSRと呼ぶもの、つまり営利戦略としてのCSRは、非営利を目的にしたものではなく、それはそれですでに営利事業の一環と捉えることは可能だ。中長期ではあるにせよ、確実な『儲け』を産み出すことを前提にしているからだ。

最近、UNDPのお偉いさんにお会いしたのだが、彼曰く、欧米企業は、国連や世銀、そして自国の政府によるODA事業に入札すること自体を、営利を前提に動いているとのこと。敢えて言えば、それらの企業にとって、ODA事業に入札するのは、それが『儲け』を出すからに他ならない。一方で、ODA事業そのものは、社会ニーズを前提に成立している。ここに、営利と非営利のティピカルな関係が見て取れる。

一般に非営利事業と呼ばれるものは、社会ニーズが先行し、『儲け』が出るかどうかは、問題視されない場合が多い。だからこそ、それは「非営利」事業と呼ばれる。『儲け』を出すことを大前提にした「営利」事業との、最大の違いはそこにある。

営利事業の場合、『儲け』が出るかどうかが事業のネックになる。当然、対象市場のリサーチを行い、利益がどの程度なのか、そもそも利益が出るかどうかを調査する。FS調査と呼ばれるものの目的は、そこにある。それに対して、非営利の場合は、えてして事業デザインが先にある場合が多い。事業デザインを描き、実現に至るまでのロードマップを描き、プレイヤーを描き、ステークホルダーを割り出すが、営利に想いを馳せるのは、最後の段階か、或いは最後までそれが無い場合すら多い。

営利事業は、『儲けたい』という欲求に基いているのならば、非営利事業の場合は、よく言えば『使命感』、俗な言い方をするなら『実現欲』、もっと俗な言い方をすれば、『名誉欲』。こんなところだろうか。非営利事業の場合、とにかくそれを実現したい、実現しなければならない、という想いが先行するため、利益という要素が最後になってしまうのは、仕方がないかもしれない。結局、寄付に頼ってしまう場合が多いのも、理解できる。

寄付を実行する場合、寄付基金を募る専門家、つまりファンドレイザーと呼ばれる人達は、営利の要素を十分に兼ねた人達である。彼らにとって、寄付対象、そして被対象は、市場に他ならないからである。ファンドレイザーは、誤解を承知で言うのならば、マーケッターに非常に近い存在ではないかと思える。

GGNで紹介した鵜尾さんの話にもあるように、欧米におけるファンドレイザーの活躍には、目を見張るものがある。彼らこそが、数百億ドルの規模を有するとされる寄付市場の創造者である、と言っても過言ではない活躍ぶりがある。しかし、私は、それで非営利を目的に従事する団体や個人の問題が、解決されるとは、やはり思えないのである。

社会ニーズや、『使命感』、『実現欲』に基いた事業を、如何にして営利事業にさせるか。やはり、支援事業にどっぷりとつかっていたものとして、この課題を追求していきたいという想いから逃れられないのである。「その方式では、利益創造・分配のサイクルが構築できません」との結果が出た場合、断念するのではなく、今のままなら不可能であるなら、何か別の方法はないだろうか、と考えられずにいられない。もちろん、事業の基本体系は、残したままに。

繰り返しになるが、一般に営利事業は、利益が出るか出ないか、これが事業実施の分かれ目になる。事業に先立つマーケットリサーチのポイントも、当然そこになるし、マーケティングの目的も営利に他ならない。しかし、非営利の目的が先にあり、事業デザインが先にあり、そしてそれを継続的な事業として確立する、つまり自己利益供出サイクルの構築を実現する方法、その方法の探求が決して無意味ではないと信じたい。かつての起業先人達の多くも、最初から儲かることを前提にした事業のみに着手してきたわけではないはずだ。

非営利の目的に基く事業案を、如何にして儲ける事業にするかということに切磋琢磨してきた起業先人達の事例。私の興味は、そして課題は、やはりそこにあるようだ。『使命感』『実現欲』『名誉心』そして『金銭欲』。それにどっぷりとつかった究極の姿、それが社会起業家なのかもしれないなあと、つくづく思ってしまうのである。

それでもいいと思う。あくまでも、現役の社会起業家を志すのであれば。(坂井)

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コメント

いつも楽しみに読んでいます。戦略的にこういうスタンスで書きました?

個人的には、宗教以外で「お賽銭」のように、「定期的に」「明るく希望をもって」お金が集まるしくみって、ないのかなぁと思っています。

投稿 赤坂燃料 | 2008年2月29日 (金) 11時54分

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